後ずさりしながらドミニオン

Nous entrons dans Dominion à reculons.

場に残るのか問題を小難しく考える

 

TLでせっかく書いたから、「このカード、場に残る?」問題について自分なりにルールをまとめます。やらねばやらねばと思っていたことだし自分の中で整理がついていなかったからいい機会。2019年のルール変更とくに第2節トラッキングについての解説記事です。読みにくいです。Discordを資料にしているがf.dsは読めてないので、ここ数日のあいだに以下の内容が間違っていると判明することだってありうるでしょう。

 

各自英語のルールブックpdfをダウンロードし、なおかつ2019年のルール変更を(できれば英語で)開いてくれ。

ssly-seesaw.hatenablog.com

 

 

 

出発点となるルールは次のとおり。

 

A. あるカードをクリーンアップフェイズに場から捨て札にする論理。基本セット。

B-1. 持続カードを場に残すルール。『海辺』で初登場、最新は『移動動物園』に書いてある*1

B-2. 玉座の間系が持続カードを使用した場合にその玉座の間も一緒に残しておくルール。紆余曲折あったが現行のものは『冒険』以来、最新としては『移動動物園』に書いてある。日本語版の『海辺』を参照してはいけない*2

 

ここまではなじみがあるはず。今回の問題はなじみがあるはずだから起きているのだが。

 

そして2019年のルール変更が導入した遠隔操作系 emulatorについての規定群がある*3。これを分解して関係あるところを抜き出すと以下のようになる。

C-1. 遠隔操作系がカードを場に出さず使用した場合に、あたかも使用したカードであるかのように場に残すか決めるルール。

C-2. C-1のうちの一つとして、遠隔操作系が持続カードを使用したとき、あたかも使用した持続カードであるかのように場に残すか決めるルール。

C-3. 遠隔操作系で玉座の間系を場に出さずに使用し、それによって持続カードを使用した場合に、あたかも持続カードと一緒に場に残る玉座の間系であるかのように遠隔操作系を場に残すルール。

C-4. 玉座の間で遠隔操作系を複数回使用し、その遠隔操作系が複数の持続カードを場に出さずに使用したとき、あたかもその遠隔操作系が使用した持続カードのどれか1つでも場に残っているかのように、やるべきことがなくなるターンまで遠隔操作系を場に残すルール。C-2の応用と見てよい。

 

 

Twitterでの議論はC-3がすっぽ抜けていたりC-3とC-4がごっちゃになっていたりしたようだけど、ここまでは2019年のルール変更に書いてあるとおり。

 

 

確認が必要だと思われるのは、C-4において始点となっている玉座の間をいつ捨て札にするのかである。「玉座の間で遠隔操作系を使用した場合」にこの玉座の間に起こること。それは遠隔操作系に関する規定(一連のC)では触れられておらず、したがってA~B-2により決定される。玉座の間が使用したカードが持続カードでなければ(e. g. はみだし者)場に残らないし、持続カードなら(e. g. 船長)それといっしょに場に残る。遠隔操作系で何を使用しているかは直接的な関係がない。

 

C-4を書いたからわかりにくくなっているのでは? C-4で始点の玉座の間について説明すればよかったのでは??(ドナルドーーーー!)

  

玉座の間で鍛冶屋をハツカネズミの習性で使用して漁村を使用すると、鍛冶屋=ハツカネズミの習性が遠隔操作系なのですが、玉座の間は場に残らず、鍛冶屋だけが場に残る。

 

 

はてさて、Twitterでの議論では倣っているとか類似とか相似とか整合性とかの議論をしていたけど、そうやって片づけてはいけない。BとCはなんらかの統一的なルールをもとに導出された双子というわけではなく、まったく別個の独立した規定であり、両方覚えなくてはならない*4。 

 

 

結論として、何が場に残るのか。ルール勢のcrlundyの表現がいい感じなのでもってくると、こうまとめられる。

持続カード  - やる事柄を済ますまで
玉座の間系 - 持続カードといっしょのときのみ、その持続カードが場に残る限り場に残る
命令カード〔正確には遠隔操作系〕 - これが使用したカードがあたかも場に残るかのように、そのあいだその限りにおいて*5

 

というかドナルドもこのあたり勘違いすることがある*6。難しい。 

 

 

えっと、遠隔操作系で場に出さずに玉座の間を使用し、手札の玉座の間を使用して、それで手札の持続カードを使用するパターンでこの遠隔操作系が場に残るかどうか網羅しきれてないような気がしてきた。玉座玉座持続。場に残らない。C-1です。

 

2019年のルール変更の追加改定で「命令」が導入される以前の発言だが、引用すると

はみだし者が玉座の間を使用し、それが玉座の間を使用し、それが持続カードを使用する場合、この持続カードは持続カードのルールに従って場に残り、2つ目の玉座の間は玉座の間 - 持続カードのルールにしたがって場に残り、1つ目の玉座の間はなにも場に残るようにするものがないので残らず、ということははみだし者は場に残らない*7

 

 

それからそれから、命令カードで命令カードを使用するパターンは消えた……と思ったけれど、遠隔操作系で遠隔操作系を使用するシチュエーションは存在するので確認しておきましょう。ネクロマンサー!

 

ネクロマンサーで廃棄置き場のはみだし者を使用して、それで持続カードを使用する。ネクロマンサーは場に残る。C-1です*8

 

 

 

場合わけが得意な人はもっと謎を見つけてこれそう。

 

 

 

遠隔操作系に含まれるカードははみだし者・相続による屋敷・大君主・ネクロマンサー・船長(以上、2019年のルール変更に明示)およびハツカネズミの習性(『移動動物園』発売時に追加)であり、命令カードに限られず、leave it thereが指標になる(はず)*9

 

 

 

相続した屋敷やネクロマンサーに命令の種別を付与したり、はみだし者や大君主で持続カードを使用できないようにしたり、ハツカネズミの習性で持続カードを選べなくしたりという工夫でより統一的なルールを作ることができたのかもしれないが、いろいろな思惑からそうはならなかった。

 

2019年のルール変更で、遠隔操作系に含まれる旧変身系ex-shapeshiftersは変身していたころの挙動をなるべく再現するようルール整備されているわけだが、ここで玉座の間系-持続カード(B-2)にはルール変更がほどこされず、結果として玉座の間系 - 変身系 as 持続から玉座の間の挙動が変わってしまった……ここまで書いていたことが正しいのか不安になる結論が出てきたけれど大丈夫かしら。ついでにいうとネクロマンサーもC-3によって昔と異なる動きになっている……けど、ぼく変わってませんという顔してるよね。

 

 

B-2のルールは「玉座の間は、使用したカードが場に残る限り、一緒に場に残る」と表現しがちかなという印象があるが、厳密に「玉座の間は、使用した持続カードが場に残る限り、一緒に場に残る」と言っていくべきか。自戒を込めて*10

 

玉座の間系にして持続である首謀者が入ってくるとやばいことになり、遠隔操作系にして持続である船長で玉座の間を使用しはじめると収拾がつけられないですね。がんばりましょう。

 

 

 

 

 

遠隔操作系に関連する旧記事↓

ssly-seesaw.hatenablog.com

 

*1:本筋に関係ない話。B-1はAを持続カードに限定して分化させたものである。Aを持続はもちろんさらに極端なケースまでカヴァするように言うと、「やるべき事柄が残っていなければそのターンのクリーンアップフェイズに場から捨て札にする――相手ターンであったとしても!」となる。これは前哨地(旧)の議論にはじまり、相手ターン中に呼び出した複製などのFAQの解釈を経て、『移動動物園』でもろもろのリアクションカードたちを律するべくルールブックに明示された。

*2:何が玉座の間系なのかは別の話だけど、とりあえずここでは触れないでおかせて。

*3:2021年8月14日註追記:emulator――まねる、擬態する――という言葉はwiki.dsにおいてはみだし者のような動きをするカードをまとめる項目で採用されている。その立項は2019年のルール変更の少し前のこと。ここでは現代の能力を念頭に遠隔操作系と訳す。

[http://wiki.dominionstrategy.com/index.php/Emulator 2021年8月14日閲覧。]
delegate / delegator 代理・代行という言葉も提案されたことがある。なんにせよ肝は、はみだし者が別のカードがごとく / 別のカードとして―― as ――姿を変えるわけではなくなった点にある。

*4:2021年8月14日註追記:力点はこのとおりなのですが、もちろんC-3の判定はB-2をベースに決めています。

*5:Duration - until it’s done doing things
Throne - only stay out with Duration cards, and for as long they do
Command - as long as the card it played would have 
[https://discord.com/channels/212660788786102272/285903840660946954/827580456114847774  2021年4月7日、Dominion Discord #rule-helpにて、2021年8月8日閲覧。]

*6:たとえばこれは勘違いに対して、ルールの整備に深くかかわっているIngixに、前と言ってること違うやんけと正された姿である。
「あなたが正しい。玉座 / 持続のルールはもちろん玉座で持続カードを使用することにのみ適用され、命令カード〔を使用すること〕には適用されない。はみだし者のFAQ(〔『暗黒時代』の最新刷りですでに〕印刷されたことがあるものだが)のなかの命令カードのルールは、はみだし者を使用した玉座の間を場に出したままにするルールを持っていない。
You're correct. The Throne / Duration rule of course only applies to Throning Durations, not Command cards. The Command card rules in the Band of Misfits FAQ (which has been printed) does not have a rule for leaving out Throne Rooms that play Band of Misfits.」
2020年5月7日、Dominion Discord #rule-helpにて、2021年8月8日閲覧。『暗黒時代』の最新刷りではみだし者が命令カードに変わったことは聞いているのですが、残念ながら未見。前後を読むと、わりあい信用のおけるcrlundyも「わたしはこう思う」というふうな発言をしている。2019年のルール変更~移動動物園発売にかけて、ルールが表立って整備されていく感じ。

*7:BoM playing throne playing throne playing duration, the duration stays out due to the rule for durations, the 2nd throne stays out due to the rule for throne-duration, the 1st throne doesn't since nothing compels it too, thus BoM doesn't stay out

[https://discord.com/channels/212660788786102272/285903840660946954/626182773333557260  2019年9月25日、Dominion Discord #rule-helpにおけるドナルドの発言、2021年8月8日閲覧。]
当時の細かい経緯を掘り起こすと表裏のひっくり返る発言がでてきそうなのでつまみ食いはよくないかもしれないが、おそらく正しいと思われるので引用しておく。

*8:「命令」導入前の発言は見つかるのですが以降のものをさがしたいのでいったん保留。

*9:なお、ここまで、引用していることが本当に正しいことなのだという保証を自分の中で得るための資料としてドミニオンオンラインでこう実装されているからという実験結果も参考にしているのだけど、一つだけ、ドミニオンオンラインでバグがある話をしておこう。持続カードPをハツカネズミの習性にして持続カードQを使用すると、Pが場を離れてしまう。本来であれば場に残る。P自身のB-1に関する判定で予約が残っていないと判断されてしまっている?

*10:ところでB-2で「現行のものは『冒険』以来」と書いたが、これは現行のルールを導出できる記述が遡及的に『冒険』に見いだされるということであり、そもそも海外コミュニティでも変更が取り上げられたのは『帝国』発売後2016年秋のことで、それもふとした拍子にドナルドとステフの検討が表に出てきたにすぎないように見える。ルールに詳しかったひらくさんですら2016年の夏の段階では古い挙動にしたがった説明をしている [引用略]。日本語のコミュニティに認知されたのは当該スレッドの議論をヒロタシさんがブログで取り上げた2016年12月末時点であろう [https://hirotashi-domi.hatenablog.com/entry/20161231/1483159585 2021年8月8日閲覧]。日本・世界どちらにせよ、実質的にはShuffle iT版のドミニオンオンライン(2017年~)に実装されて実現・普及していったといってよいだろう。受容の過程を振り返ってみるのは楽しいかもしれない。