leaving it thereとは何か
2019年のエラッタとルール変更以来「場に出さずに使用する」play [...], leaving it thereという指示のあるカードが増えました。はみだし者や大君主、相続された屋敷などですね。成り代わり系にまつわる古い問題はおおむね解決されて、スッキリしたと言えるでしょう。
一方で新しいテクストは、それはそれで別のルール上の疑問を招くことが多いようです。バグ報告されてしまうことも時々あるので、関連ルールをさらってみたいと思います。
サプライから廃棄できない
問題になるのは死の荷車のような自壊するカードを使用するときの挙動です。
はみだし者を使用した。
サプライの死の荷車を使用した。
死の荷車を廃棄することを選んだ。
廃棄できなかったため+$5を得られなかった。
どうして死の荷車はサプライに居て他の効果でどこにも行っていないのに、自分で自分を廃棄することができないの、と。なぜでしょう?
「場に出さない」から?
よく見かけるのは、はみだし者に「場に出さずに」という指示があるから死の荷車は動かせなくなり廃棄できない、という説明です。さてさてそういうものでしょうか。なにごともカードテクストから。まずは念のため、はみだし者のテクストを確認しておきましょう。死の荷車もエラッタ対象でしたから怪しい場合は参照しておいてください*1。
はみだし者
サプライにある、このカードよりコストが少なく司令カードではないアクションカード1枚を場に出さずに使用する。
Play a non-Command Action card from the Supply that costs less than this, leaving it there.
ちょっと立ち止まってみる必要がありそうです。leaving it thereはあくまで、はみだし者の能力"Play [...], leaving it there."の一部、分詞構文です。ここでははみだし者によるplayに対する付帯状況を述べていて、「はみだし者が死の荷車を使用する」ことに「場に出さずに」という留保を付け加えているにすぎません。そのため上記の説明は不十分です。死の荷車が自分の効果で廃棄されることをleaving it there単体が不可能にしているわけではありません。
カードを動かせないといえば
じゃあ何か、ここで死の荷車を廃棄して5金出せるの、と言われれば、やはりそれはできません。leaving it thereの後にもう1ステップ、廃棄をできなくする別のルールが働いているからです。廃棄という移動を阻止してしまうルール……そう、移動阻止ルールです。
え、死の荷車は見失われてない(古い言い方ですが)、ちゃんとサプライにいてサプライで効果を発揮しサプライから廃棄されようとするのでは?わかる。でも、移動阻止ルールには明記されているんです*2
ある効果がなんらかのカードを移動できるのは、効果がカードをどこから移動するか特定している場合、あるいは効果が、そのカードを今まさにある場所に置いた場合に限られます。あるはずだと効果が予期する場所にカードがない、あるいはあったとしても一度場を離れてから戻ってきていた場合、その効果はカードを動かせません。なお、使用したカードは場に出ているはずだと予期されます。したがって、場に出ていなければそのカード自身による効果であっても移動することはできません。
移動阻止ルール、あるいはその前身の消息不明ルールの焦点は、ある効果とある物理的カードの関係に置かれています。そして使用による効果は発生源たるカードが「場」にあるはずだと、実際の在処に関係なく予期します。したがって死の荷車はあるべき場所にないために自分自身を動かすことに失敗してしまう、ということだったのです。
ルールの来歴
使用による効果はその発生源が場に出ていないとそれを動かせないという制限はいつからあるんでしょうか。まずルールブック的には、leaving it thereという文言のカードが初めて世に出たときに説明されています。夜想曲ですね。ネクロマンサーで廃棄置き場にある陣地を使用したとき、場にあると予期されるため陣地は廃棄置き場から脇に(もちろんサプライにも)移動しません*3。
しかしドナルドの裁定を探すとこのルールの出自をもう少し遡ることができます。2015年6月の投稿で、消息不明ルールが使用による効果と発生源の関係を扱えるようになりました。状況はこうです↓
玉座の間ではみだし者(旧版)を使用し、1回目で祝宴にした。廃棄置き場に移動したはみだし者は2回目の使用で別のカードに変身できる。これを島にした場合、このはみだし者 as 島は島マットの上に移動する?
ドナルド「はみだし者は脇に置かない。なぜならそのはみだし者は自身が場に出ていると予期するが出ていないからだ*4」
冒険発売にともなって玉座の間はみだし者のルールが変わったときのことですね。島の代わりにリザーブカードとしても同様です。実際にやったことのある人は少ないと思いますが、実は結構古い規定だったのです。
最後に
動物祭 Menagerieにて野ネズミの生き方 Way of the Mouseがleaving it thereを使い、一方で死の荷車の位置にも蝶の生き方 Way of the Butterflyや馬の生き方 Way of the Horseのせいでいろいろなカードが入ってきます。これからもこの手のカードは増えていくのでしょう。どう処理すればいいかはいつの間にか慣れるものだと思いますが、その裏にある機構も気にしておくと役に立つときがあるかもしれません。